創業期ものがたり

The Founding Story

第1話

自分たちの商売

昭和2年、松岡俊次(25才)・ちか(18才)は、縁あって結婚しました。
2人は、結婚式の場で、初めて顔を合わせ、ちかは、どの人が、自分の旦那さんだろう?と思っていたといいます。

2人は、俊次の兄がしていたいぶし瓦の製造の仕事を手伝っておりましたが、いじめと言いますか、橋田寿賀子のドラマに出てくるような状況で、肩身の狭く、惨めな思いを続けておりました。
しばらく、つらい状況が続きはしましたが、俊次もちかも、いつかは自分達で商売をしようという気持ちを秘め、昭和3年には茂、昭和5年には茂男、昭和7年には三郎と、3人の男子に恵まれ、日々を必死で過ごしていました。

昭和10年正月、もう瓦を焼くのはやめにしたいという兄の下を離れ、俊次・ちかは、いよいよ自分達で商売を始める決心をしたのです。

そもそも、俊次は、自作農家の三男坊として、のんびり育ち、義務教育終了後、近くの東郷学院をはかばかしくない成績で卒業し、神戸の川崎製鉄に就職しましたが、労働運動に参加して解雇になり、それ以来、瓦を焼く事ひとすじの、まじめで口数の少ない、人の良い人間でした。
それを支えるちかは、勝気で前向き、商売っ気のあるタイプなので、やる気マンマンでしたが、商売を始めるにも、お金も何もありません。

頼れる親は既になく、兄弟も、決して頼れる状況でなかったので、ちかは、1人で、村のお寺の住職さまにお金を貸してほしいと申し出に行くのです。